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マッシュミュージックスクール ボーカル科作詞科作曲・編曲科講師の藤本涼子です。

「滑舌をよくしたい」と思ったとき、最初に何をしますか?

口を大きく動かす練習。
早口言葉をひたすら繰り返す。
「はっきり発音しよう」と意識する。

多くの方が、このアプローチを試みます。
でも、なかなか変わらない。頑張っているのに、何年経っても同じ悩みを抱えている。そういう方に、まずお伝えしたいことがあります。

滑舌は「口の問題」ではないことが多いのです。

「口の使い方が悪いから滑舌が悪い」という思い込みがありますが、実際に発声の視点から見ると、原因はもっと手前の段階にあることがほとんどです。
練習してきたことが無駄だったわけではありません。ただ、入り口が少しだけ違っていた可能性があります。

この記事では、なぜ口だけ頑張っても変わらないのか、そして発声システム全体の視点から滑舌にアプローチするとどうなるのかを、専門的な内容もなるべくわかりやすくお伝えします。
「練習しても変わらない」と感じてきた方ほど、読んでいただけると何かが変わるかもしれません。






 

 

 

 

 

① 「口をしっかり動かす」が逆効果になる理由

「はっきり発音しなければ」と意識した瞬間、多くの人は無意識に口まわりや顎に力を入れます。
レッスンに来られる生徒さんも、”滑舌を良くしようとすると大袈裟に口や眉毛などの顔の表情を使って滑舌を良くすることが正解だ”と思われている方も少なくありません。

一見、正しいことをしているように感じますよね。
でも、この「力を入れる」という動きが、かえって問題を深くしてしまうことがあります。
口元や顎に力が入ると、連動して「舌根(ぜっこん)」と呼ばれる舌の根元部分も緊張します。舌の奥のほう、のどの入り口あたりにある部分のことです。
ここが緊張すると、その近くにある「喉頭(こうとう)」という器官の動きが制限されてしまいます。
喉頭というのは、声帯が収まっている箱のような器官で、いわゆる「のどぼとけ」の奥にあります。
声帯は、呼気(息)によって振動することで音を作り出す、非常に薄い粘膜のひだです。
この喉頭が自由に動けない状態になると、声帯の振動が乱れ、出てくる音がかすれたり、詰まった感じになったりします。

つまり「口をしっかり動かそう」という努力が、声が通る道を窮屈にしてしまうのです。
「練習してもなぜか硬くなる感じがする」「頑張るほど余計に聞き取りにくくなる」という経験がある方は、このパターンに当てはまっている可能性があります。
でも、それはあなたの口が悪いのではありません。入り口が少しだけ違ったというだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

②発声の視点から見た、滑舌の正体

 

発声は、口だけで完結しているわけではありません。
声が生まれるまでの流れを整理すると、

「呼吸 → 声帯の振動 → 身体全体での共鳴 → 調音」

という順序があります。
「調音器官(ちょうおんきかん)」というのは、音を言葉に変えるための器官のことで、舌・唇・歯・顎・軟口蓋(口の奥の天井の柔らかい部分)などがこれにあたります。
滑舌は、この「調音」の部分に関わる問題です。

ただし、調音より前の段階──呼吸や声帯の振動──がうまくいっていないと、調音をどれだけ頑張っても言葉の輪郭はくっきりしてきません。
土台が揺れていると、どんなに丁寧に言葉を積み上げても崩れてしまう、というイメージです。
ボイストレーニングの現場で、滑舌に悩む方に多く見られるのは、以下に挙げた大きく2つのパターンです。

 

 

 

 

パターン①:息の流れが止まっている

 

発音に意識を集中するあまり、呼吸が浅くなってしまうことがあります。
息の流れが止まると、特に子音(「か」「さ」「た」などの最初の音)の輪郭がぼやけます。
「もごもごして聞き取れない」「なんとなくこもって聞こえる」という状態は、口の動きではなく、息が先に流れていないことが原因になっていることがよくあります。

 

 

 

 

パターン②:顎が先にロックしている

 

顎関節(あごの付け根にある関節)の緊張が、舌の動きを狭めているケースです。
自覚がないまま、話すたびに顎をギュッと締めている方が少なくありません。
顎が固まると、舌が自由に動ける範囲が狭くなり、子音が不明瞭になります。
特に長時間話したあとに顎がだるい、こめかみが疲れる、という感覚がある方は、このパターンを疑ってみてください。
どちらも、口の「能力」や「器用さ」の問題ではありません。声のシステムの流れが、どこかで詰まっているだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

③改善のために、まず「解放」から始める

「では、何をすればいいですか?」とよく聞かれます。
答えはシンプルです。

「口を動かす練習」の前に、「詰まりを解く」ことです。

発声の流れをもう一度整理してみましょう。

① 身体の緊張を解く → ② 息を流す → ③ 声を出す → ④ 言葉を乗せる

多くの方は③と④だけを練習しようとしています。
でも①と②が整っていないと、③と④をどれだけ繰り返しても、変化は起きにくいままです。

具体的には、まず顎をゆるめます。口を少し開けて、下顎を重力に任せて落とすだけでかまいません。
次に、舌の根元(舌根)を意識して手放します。 「力を抜こう」とするより、「そこがあるな」と気づくだけで十分です。
首と肩の力を抜いたら、息を先に流してから、声を出す。その上に言葉を乗せていきます。
この順序でやってみると、「何かが外れた感じがした」「声が楽に前に出てきた」という感覚を持つ方が多いです。
発声は、力を足すよりも、必要のない力を手放すことで変わります。滑舌も同じです。
口を頑張る前に、詰まっているものを先に取りのぞく。そこから始めてみてください。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?
下記に本日のまとめ実践ガイドも書き記してあります。
「もし「自分でやってみたけれど、判断がつかない」と感じた場合は、体験レッスンで一度状態を確認してみるのも一つの方法です。
一緒に、自分の体の感覚を高めながら、楽な発声ができるように取り組んでみましょう。
お待ちしています。 

 

 

 

発声や歌い方は、文章だけでは分かりにくい部分も多く、自分ではできているつもりでも力みやクセに気づきにくいことがあります。
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まとめ

滑舌が変わらないのは、才能の問題でも、口の筋肉が弱いせいでもありません。
発声システム全体のどこかに、詰まりが起きているだけです。
口を動かす練習に入る前に、顎・舌根・呼吸・喉頭の状態を確認する視点を持つだけで、アプローチが大きく変わります。
「頑張ってきたのに変わらなかった」のは、才能がなかったからではなく、アプローチが少しだけ合っていなかっただけかもしれません。


実践ガイド|今日からできる3ステップ

ステップ①話す前に「顎と首の状態」を確認する
鏡の前で、顎に力が入っていないかを見てみましょう。口をわずかに開けて、顎を重力に任せてそっと落とします。首の力も一緒に抜けたら、そのままやさしく「あ」と声を出してみてください。「変えよう」とするより「今の状態に気づく」ことが目的です。

ステップ②息を先に流してから言葉を出す
「はー」と息だけを静かに出したあと、その流れに乗せるように言葉を出してみてください。息の流れが先にあると、子音がはっきりしやすくなります。最初は言葉にならなくてもかまいません。息→声の順序を体感することが大切です。

ステップ③早口言葉は「ゆっくり」から始める
早口言葉をすばやくやろうとすると、口や顎に力が入りやすくなります。意識的にゆっくりなスピードで、顎・舌・息の状態を感じながら丁寧に発音してみてください。速さを上げるのは、ゆっくりでも詰まらなくなってからで十分です。

<練習中に気をつけること>
顎や首が固まってきたと感じたら、一度止めて休んでください。緊張したまま繰り返すと、その力みのパターンを強化してしまいます。「疲れてきたな」「なんか硬くなってきた」という感覚は、止まるサインです。

■ さいごに
「ゆっくりやってみたけれど、自分のどこが詰まっているかわからない」という方も、少なくありません。 発声の問題は、自分一人で原因の場所を特定するのが難しいことがあります。顎なのか、舌根なのか、息なのか。感覚は人それぞれ違いますし、長年染みついた習慣に自分では気づきにくいこともあります。
もし「やってみたけれど変化を感じにくい」「一緒に確認してほしい」と感じたら、体験レッスンに一度いらしてみてください。 声がどこで詰まっているのかを一緒に探して、言葉が楽に伝わる声になるよう取り組んでいきましょう。お待ちしています。



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