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Follow @mushmusicschoolポーティスヘッドのようなダウナーなトリップホップサウンドを作ろう! (後編 : シンセサウンドメイキング編②)
2020/4/15
作詞・作曲・編曲・DTM
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Follow @mushmusicschoolマッシュミュージックスクール DTM科・トラックメイク科講師の坂本竜太です。
前編・中編に引き続き後編となる今回は、
「ポーティスヘッドのようなダウナーなトリップホップサウンドを作り方」
の
「シンセサウンドメイキングのコツ」②
について解説していきたいと思います。
構成されている楽器の編成はピアノやストリングス、ギターやベースといったオーソドックスなものですが、 それぞれの音色にとてもユニークなエディットを施すことでトリップホップ特有の哀愁漂う浮遊感を再現しています。
またテルミンのような特殊な楽器もソフトシンセのパラメーターに少しエディットを加え、 MIDIの打ち込みを工夫することでかなり近いニュアンスに仕上げることができます。
前回に引き続きトリッキーなテクニックが満載ですが、気に入った部分をご自身の楽曲のアクセントとして取り入れたりと様々な活用ができるのではないかと思います。
今回は後編として「シンセサウンドメイキング」②の解説となります。
それでは詳しく見ていきましょう。
「ポーティスヘッドのようなダウナーなトリップホップサウンドを作ろう! (前編 : リズムサウンドメイキング編)」の記事はこちら
「ポーティスヘッドのようなダウナーなトリップホップサウンドを作ろう! (中編 : シンセサウンドメイキング編)①」の記事はこちら
動画解説
目次
①デモ楽曲を聴いてみましょう。
ますはデモ楽曲を聴いてみましょう。(リズムトラックはミュートしてあります)。
いかがでしたでしょうか?
リズムトラックをミュートしてある分、シンセサウンドのディテールがより聴き取りやすくなっていますね。
全体的に「浮遊感のある枯れた感じ」にまとめつつもボトムとなる低域がしっかりと押さえられており、 個性的ながらも聴きやすいアレンジになっているかと思います。
このように
「個性的なサウンドを際立たせるにはその正反対に位置するベーシックなサウンドをしっかりと配置」し、
エディットも丁寧に行い「双方のコントラストを明確にすることがが大切」です。
それでは具体的なサウンドメイキングを見ていきましょう。
②ギターのサウンドメイキングとMIDIの打ち込みのコツ #3 (トレモロ~アームダウンギター)
では次に楽曲の最後に鳴っているトレモロがかかったアームダウンギターのみを聴いてみましょう。
アームダウンギターにはLogic Pro X付属のギター音源から「Sunburst Electric」を使用しています。(レガシー音源)。
2.1 アームダウンギターのサウンドメイキング
このようなエフェクティブなギターサウンドもポーティスヘッドのようなトリップホップサウンドには欠かせないアクセントです。
まず、サウンドメイキングですが、
「①Gtr Amp Pro → ②Pedalboard (MONSTER FUZZ) → ③Single Band EQ (Low Cut : 550 Hz) → ④Channel EQ → ⑤Space Designer (リバーブ) → ⑥Tremolo → ⑦Echo」
の順にインサートしていきます。
ここでは「MONSTER FUZZ」で荒々しく歪ませた後、枯れたサウンドメイキングの定番プラグイン「Single Band EQ」で低域をバッサリとカットしています。
そしてこのサウンドの一番の特徴とも言えるのが「リバーブ(Space Designer)の後にトレモロをかける」 というインサートのテクニックです。
通常ですとリバーブのような空間系エフェクトは最後にインサートすることが定石ですが、 今回はこのように
「リバーブがかかった音にトレモロをかけることで空間そのものが歪んでいるような独自のサウンド」
を作り出しています。
また、
「④ギターのサウンドメイキングとMIDIの打ち込みのコツ #2 (不協和音コード)」
でも解説している 「Echo」を最後にインサートし、今度は「Color」のパラメーターをマイナスの数値に持っていく(今回は-35)ことで、 ディレイ音にハイカットフィルターがかかり、ディレイ音が徐々にこもっていくような設定にしています。
このハイカットフィルターの質感がトリップホップのローファイ感を作り出すのにとても効果的な役割を担っています。
2.2 アームダウンギターのMIDIの打ち込み方
次にアームダウンギターのMIDIの打ち込み方ですが、ここでポイントになるのは
「ピッチベンドのオートメーションでアーム奏法を再現する」という点です。
今回はピッチベンドを短時間で激しく動かし最後に下げ切ることで不穏な雰囲気のアクセントギターを作り出しています。
このようなワンショットの効果音的なギターはポーティスヘッドのようなトリップホップサウンドを作る上で大切なポイントに なってきますので、既成概念にとらわれずどんどん実験していきましょう。
③歪んだストリングスのサウンドメイキング
次に楽曲のブレイク部分で登場する「歪んだストリングスサウンド」を聴いてみましょう。
かなり個性的なサウンドに仕上がっていますが、このように
「通常ではあり得ないような規格外のサウンドメイキングもトリップホップの魅力のひとつ」
になっています。
ではプラグインの設定を見ていきましょう。
ここでキモとなるのは
「リバーブ(Space Designer)で広がった音の成分を「Bit Crusher」と「FUZZ MACHINE(Pedalboard)」で 歪ませている」
という点です。
「音を歪ませるのと同時にリバーブで広がった成分まで歪ませてしまおう」
というかなりトリッキーなテクニックとなっていますが、このようにプラグインのインサート順によっても音色の変化はかなり変わってきます。
またストリングスの音色がブツブツと途切れ途切れになっているのは「Bit Crusher」の処理によるもので、 この「Bit Crusher」を「FUZZ MACHINE(Pedalboard)」の前にインサートすることで、 FUZZだけでは作り出せない独特の「壊れた質感」を作り出しています。
④テルミンのサウンドメイキングとMIDI打ち込みのコツ
最後に独特の哀愁感のあるテルミンのサウンドを聴いてみましょう。
この音色はソフトシンセのパラメーターをエディットして作っている言わば「テルミン風サウンド」なのですが、ビブラートの質感も含めてなかなかリアルなテルミン風サウンドではないでしょうか?
こちらが本物のテルミン
4.1 「Techno Chirper」のエディット
ではまず、この音色の素となる「Techno Chirper」の音源を呼び出してみましょう。
ライブラリの中から
「レガシー → Logic → 06 Synthesizers → 01 Synth Leads → Techno Chirper」
の順で呼び出します。
次にソフトシンセ「ES2」のパラメーターをエディットしていきます。
①まず、テルミン特有のポルタメントを表現したいので、画面左側にある「Glide」の値を250msにします。
これで鍵盤から鍵盤へ移動する時にポルタメントがかかるようになりました。
②次に音色のアタックを弱くして滑らかな立ち上がりにしたいので、画面右下の「ENV 3 vol」の「A = Attackを1500ms」に設定します。
この値がが大きくなるほど音色の立ち上がりが遅くなりますので、楽曲のBPMなどに合わせて変化させてみるのが良いでしょう。
4.2 MIDIの打ち込み
次にMIDIの打ち込みを見ていきましょう。
ここでキモとなるのは「滑らかなボリュームの変化とビブラートのかかり具合」になります。
ここでは「ビブラートをモジュレーションの変化で表現」しています。
基本的には「ボリュームが大きくなるに連れてビブラートのかかり具合も強くなってくる」というオートメーションの書き方でOKです。
この2つのオートメーションの微妙なニュアンスを追求することで、より実際のテルミンの音色に近づいてきますのでじっくりとエディットしていくのが良いでしょう。
4.3 ソフトシンセの特性・その他テクニック
またこのソフトシンセの特性上、
「ポルタメント効果を得るには前後するノートを重ねる必要があります」
ので、先に鳴っているノートをほんの少し長めに調整しましょう。
写真のように1グリッドだけ重なっていればOKです。
プラグインの設定はもはや定番となりつつある「Single Band EQ」で太すぎる低域をバッサリとカットし、リバーブを適度にかけるくらいでOKです。
また、ここで注目していただきたいのは
「プラグインの最後にGainをインサートしている」
という点です。
このトラックはMIDIロールの画面の中でボリュームのオートメーションを書いているため、 ミキサーのフェーダーは常にオートメーションの情報を追従する状態になっています。
仮に一時的にフェーダーでボリュームを上げ下げしてもオートメーションの情報が書かれているリージョンに差し掛かるとそのフェーダーのボリュームの値は無視され、強制的にオートメーションのボリュームの値になってしまいます。
↓
ですので
「オートメーションの感じはそのままで全体的にボリュームを上げ下げしたいな。」
という場合はこのようにプラグインの最後にGainをインサートしてここでボリュームを調整することでオートメーションの情報に左右されることなく簡単に全体のボリュームが調節することができます。
この方法はボリュームのオートメーションが適応されているトラック全てに有効ですので、覚えておくと便利なテクニックです。
いかがでしたでしょうか?
今回も前回に引き続きかなり個性的なテクニックが満載だったかと思いますが、このようなテクニックは意外にも様々な楽曲のアクセントとしての汎用性が高いものだと思います。
初めてこのようなトリップホップサウンドや独自のサウンドメイキングに触れる方も多いかったかと思いますので、これを機にさらに追求してみるのも良いですし、ご自身の楽曲のブラッシュアップのテクニックとして活用するのも良いかと思います。
DAWソフトはあらゆる既成概念をいとも簡単に壊せるツールでもあり、同時に新たな発見や実験を瞬時に試せるツールでもあります。
ぜひ皆さんもご自身の楽曲に取り入れてみてください!
また「前編 : ドラムサウンドメイキング編」・(中編 : シンセサウンドメイキング編)①」合も合わせてご覧ください。
下記に本日のまとめと実践ガイドも書き記してあります。
ご自身の音楽生活に役立ててください!
是非一度、当スクールレッスンにも遊びに来てください。
坂本竜太講師の執筆ブログ記事ページ
まとめ
①ギターもストリングスもプラグインのインサート順は自由自在!
既成概念にとらわれずにどんどん実験してみよう!
②テルミンサウンドもソフトシンセのパラメーターで再現!
一見難しそうなパラメーター類もいじり倒してみよう!
実践ガイド
今回の流れをオーディオデータと画像で解説
デモ楽曲
トレモロがかかったアームギターサウンド
歪んだストリングスのサウンド
テルミンのサウンド
画像解説
①ギターパート_アームダウンギター_プラグイン
②ギターパート_アームダウンギター_MIDI
③歪んだストリングス_プラグイン
④テルミン_音色エディット_01
⑤テルミン_音色エディット_02
⑥テルミン_MIDI_ビブラート
⑦テルミン_MIDI_ボリューム
⑧テルミン_ポルタメント効果
⑨テルミン_プラグイン設定
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