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Follow @mushmusicschoolDAWソフトのみでBring Me The Horizonの「Doomed」のようなシネマティックでエレクトロなオルタナティブ・ロックを作ろう! (前編:リズムパート編)
2020/7/14
作詞・作曲・編曲・DTM
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Follow @mushmusicschoolマッシュミュージックスクール DTM科・トラックメイク科講師の坂本竜太です。
今回は「DAWソフトのみで作る「Bring Me The Horizon」の「Doomed」のようなシネマティックでエレクトロな オルタナティブ・ロック」を解説していきたいと思います。
今回、参考資料としているのは同バンドのオフィシャルYouTubeに掲載されているライブ・ヴァージョンの「Doomed」になります。
フルオーケストラを交えた壮大なスケールとオリジナル・バージョンのラウドでエレクトロニックなアプローチのコントラストが際立つ素晴らしいアレンジに仕上がっています。
バンドアレンジに加えてオーケストラやシーケンストラックなど様々な要素が混在するこのような楽曲の作り方を
前編 : リズムパート
後編 : ギター~シンセ~オーケストラパート
の2回に分けて解説いたします。
また、このような楽曲を制作する際、各種DAWソフト純正ではなく高価なサードパーティー製のソフトウェアやプラグインのみを使用する前提の場合、それらのソフトウェアを所有していない = 作れない = 即戦力にならない、という流れになってしまい、 ご自身の楽曲に取り入れにくくなってしまうため、主要なパートに関しては極力DAW純正のソフトウェアを駆使するようにしています。
それでリズムパート編を詳しく見ていきましょう。
Bring Me The Horizon:Doomed
動画解説
目次
①まずはデモ楽曲を聴いてみましょう
ますはデモ楽曲を聴いてみましょう。
デモ楽曲
いかがでしたでしょうか?
✔︎エレクトロニックなシーケンストラック
✔︎ストリングス、ブラスなどのオーケストラセクション
✔︎タイトでコンプレッションが強めのドラム
✔︎ワイドでステレオ感のあるラウドなギター
など、「Doomed」の持つアレンジ要素が分かりやすく配置されているかと思います。
このような楽曲のアレンジでは
「それぞれの楽器が登場するタイミングと役割を明確にすることが大切」
です。
今回はこの楽曲の中のリズムパートに焦点を当てて解説いたします。
では具体的なトラックメイキングを見ていきましょう。
②リズムトラックのサウンドメイキング #1 (楽曲の前半および後半部分 = 生ドラム以外のシーケンスパート)
ではまず、このパートのリズムトラックのみを聴いてみましょう。
2.1 トラック構成
このパートは6トラックの構成になっており、
TR①~③:BATTERY 4
TR④~⑤:DAMAGE
TR⑥:EVOLVE
を使用しています。 (いずれもNative Instruments : KOMPLETE 12 ULTIMATEにバンドル)
具体的には
TR①キック & リムショット & アクセント・パーカッション
TR②リムショット (TR①と同じ音色のピッチを変えたもの)
TR③リムショット (アクセントでディレイをかけたもの = TR①と同じ音色)
TR④ハイハット (DAMAGE)
TR⑤ブレイクビーツ (DAMAGE)
TR⑥ブレイクビーツ (EVOLVE)
で構成されています。
無機質でタイトなキックを中心に、疾走感のある3種類ループ(DAMAGE、EVOLVE)を配置し、 BPM155とその半分のBBM77.5が混在するようにしています。
2.2 サウンドメイキングのポイント
ここでキモとなるポイントは
「ドライなサウンドとウェットなサウンドのコントラスト」
です。
ここでは「ドライ / ウェット = リバーブなし / リバーブあり」と捉えていただければと思います。
TR①の無機質でタイトなキックはリバーブなしのドライ、
それに対して
TR③のリムショットは「Echo」でダブディレイなテイストに、 TR④~⑥のブレイクビーツ類は「Space Designer」やNative Instrumentsの「Raum」でエアリーなリバーブ処理を行うことで
「音像の軸がしっかりしつつ透明な浮遊感のあるサウンド」に仕上げることができます。
さらにポイントとしては、
「Space DesignerやRaumのようなリバーブ・プラグインを使用する時はリバーブ成分に低域成分が少ないプリセットを選ぶ」
という点があります。
例えば教会の大聖堂のようなリバーブはそれ単体で聴くと深い量感と豊かな残響が心地いいのですが、トラック数の多い楽曲ではその量感の豊かな残響が他の音に干渉してしまい、 結果としてゴチャゴチャとしてヌケの悪いサウンドになってしまうためです。
この辺りは「リバーブをかけるサウンド自体が持っているEQ帯域にも左右されます」のでじっくりと調整しましょう。
※例 : 同じリバーブを使ってもキックのように低域が太い音ではリバーブ成分の低域も太くなりますし、 ハイハットのように既に低域の成分が少ない音ではリバーブ成分の低域も少なくなる、ということです。
RAUM_DRY
RAUM_WET
③リズムトラックのサウンドメイキング #2 (アコースティック・ドラムパート部分) : Aメロ後半 ~ サビ
ではまず、このパート(Aメロ後半〜サビ)のリズムトラックのみを聴いてみましょう。
このパートは3トラックの構成になっており、
TR①ドラム全体のキット (キック、スネア : 2種類、ハイハット)
TR②シンバル
TR③タム (①とは異なるキット)
となっています。
アコースティック・ドラムパートに関しては全てLogic Pro X純正のドラムキットおよびプラグインで音作りを行なっています。
このように細かなエディットをしっかりと行うことで、DAW純正のドラムキットでも充分なクオリティーのサウンドを作ることができます。
今回使用しているドラムキットは「Drum kit Designer」の中から「Heavy Kit」と「Bluebird kit」の2種類を使用しています。
これは「Heavy Kitではタムのサウンドが今回の楽曲で狙っていたサウンドと違っていた」ためで、 このような現象はどのドラム音源を使用しても起こることですので、その場合は様々なドラムキットを聴き比べて狙ったサウンドを見つけ、ドラムキットをミックスする方法が良いでしょう。
これはシンバルやその他のサウンドにも同じことが言えます。
④リズムトラックのサウンドメイキング #3 (アコースティック・ドラムパート部分) : コンプレッサーでの音作り
ではまず、このパートのリズムトラックのみを聴いてみましょう。
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_ON
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_OFF
このようにコンプレッサーのみでも音が前に迫ってくるような迫力のあるサウンドを作り出すことができます。
特に近年のオルタナティブ・ロックの傾向としてはこの
「コンプレッサーのセッティングがサウンドメイキングの要」
になっており、今回のデモ楽曲のドラムトラックのコンプレッサー設定よりさらに強烈なコンプレッションが効いた楽曲も多く聴かれます。
この「コンプレッサーのかかり具合」は結論から言ってしまうと「個人の好み次第」になりますので、「これが正解!という設定はありません」。
では今回のコンプレッサーの設定を見ていきましょう。
今回はLogic Pro X純正のコンプレッサーを使用していますが、基本的な概念はどのコンプレッサーでも共通になりますので、ご自身のお気に入りのコンプレッサーで試してみるのも良いでしょう。
TYPE : Platinum Digital / THRESHOLD : -26.5dB / RATIO : 4.1.1 / MAKE UP : -2.5dB / KNEE : 0.0 / ATTACK : 15.0ms / RELEASE : 40.0ms
また、これらの設定の中で特に大切なパラメーターが「THRESHOLD」と「RELEASE」になってきます。
この2つのパラメーターを動かしていくと分かるかと思いますが、
「設定のバランスが良くない場合、ドラムフレーズ自体に悪影響を与えてしまい、細かく刻むハイハットなどのグルーヴ感が不自然になってしまいます」。
参考資料としてこのパラメーターのバランスが不自然な設定でのサウンドも聴いてみましょう。
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_BAD
このように8分で刻んでいるハイハットのグルーヴ感が不自然になり、シンバルの立ち上がりも角々しい感じになっています。
とは言え、音楽はご自身の好みが最優先ですので、上記のパラメーターの数値を参考にどんどんエディットしてみましょう。
⑤アコースティック・ドラムの打ち込みのキモとなる 「クオンタイズ」 ・ 「ベロシティー」 ・ 「スネアのフラム」の考え方
5.1 ベロシティー
ダイナミックなサウンドとグルーヴィーなフレーズで楽曲に大きな影響を与えているアコースティック・ドラムですが、
「クオンタイズは全てジャストのタイミングに揃えて」います。
ですので理論的にはとても機械的なタイミングで鳴っている状態です。
その反面、実際にドラマーが叩いているドラムフレーズは全てのタイミングが微妙にズレていることでグルーヴが生まれている訳ですが、この実際のドラマーが叩いた時のようなタイミングの微妙なズレを意図的に作り出す(ヒューマナイザー等)ことばかりに目を向ける前にとても大切なポイントが「ベロシティー」です。
「ベロシティーのエディットを徹底的に行うことで、ゴーストノートのような“空気感”までかなりリアルに再現」することができます。
5.2 スネアのフラムとロール
次に「スネアのフラムとロール」ですが、まずフラム奏法に関しては
「ピアノロールのグリッドの概念をしっかりと理解しておくことが大切」 です。
まずピアノロールの拡大写真にある「22 3から22 4の間が1拍になっている状態」です。
そして「22 3から22 4の1拍の間に16本のグリッドがある」ということは
「グリッド8本 = 8分音符、グリッド4本 = 16分音符、 グリッド2本 = 32分音符」ということになります。
上記の概念を理解した上でドラムのノートが鳴っている部分(赤色と緑色の部分)を見てみると、「1音につきグリッド2本」ですので、 「スネア1音が32分音符の長さで鳴っている」ということになります。
そして今回の楽曲ではその
「スネア1音 : 32分音符が連続して鳴っている状態でスネアのフラムを作っている」ということになります。
ここでも「ベロシティー」がポイントで「赤色のノートは127、緑色のノートは63」となっており、フラムの細かなズラしを再現しています。
また、この1拍に対してのグリッドの本数の設定ですが、Logic Pro Xの場合、画面上部のBPMの右側のディビジョンの値をクリックして 「/64」に設定すると、今回の解説している内容と同じグリッド数になります。
ではそれらを踏まえた上でスネアのフラム奏法の部分を聴いてみましょう。
ACOUSTIC_DRUMS_FLAM
また、これらの「クオンタイズ・ベロシティー・フラム」に関しましては、
歪み系プラグインを駆使してワイルドなガレージロックドラムを作ろう! (後編 : ドラムトラックのMIDIの打ち込みのコツ編) のブログにも詳しく書かれていますのでぜひご覧下さい。
いかがでしたでしょうか?
多くの音を重ねる前に1音1音それぞれのプラグイン処理をしっかりと行なっていくことで、 どこか平面的だった音像にグッと立体感や躍動感が生まれ、楽曲全体のクオリティーアップに繋がっていきます。
派手ではない地味なテクニックかもしれませんが効果は絶大です。
ぜひ皆さんもご自身の楽曲に取り入れてみてください!
次回は後編 : ギター~シンセ~オーケストラパート編になりますのでこちらもお楽しみ!
「DAWソフトのみで作る「Bring Me The Horizon」の「Doomed」のようなシネマティックでエレクトロな オルタナティブ・ロック(後編 : ギター~シンセ~オーケストラパート編)」の記事はこちら
下記に本日のまとめと実践ガイドも書き記してあります。
ご自身の音楽生活に役立ててください!
質問等ありましたらお気軽にお問い合わせください。
是非一度、当スクールレッスンにも遊びに来てください。
坂本竜太講師の執筆ブログ記事ページ
まとめ
①アコースティック・ドラム以外のシーケンスパートは「ドライなサウンドとウェットなサウンドのコントラスト」をしっかり作ろう!
②アコースティック・ドラムのサウンドメイキングはコンプレッサーが命!
どんどんパラメーターを動かし音の変化を実感しよう!
③クオンタイズ ・ ベロシティー ・ グリッドの概念をしっかりと理解し、ドラムサウンドをよりリアルに仕上げよう!
実践ガイド
今回の流れをオーディオデータと画像で解説
デモ楽曲
SEQUENCE_TRACK
RAUM_DRY
RAUM_WET
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_ON
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_OFF
ACOUSTIC_DRUMS_COMPRESSOR_BAD
ACOUSTIC_DRUMS_FLAM
画像解説
①シーケンストラック画面
②BATTERY_KONTAKT画面
③空間系プラグイン画面
④生ドラムトラック選択画面
⑤ドラムキットデザイナー画面
⑥生ドラムトラック_2種類画面
⑦生ドラムトラック_コンプレッサー画面
⑧生ドラムトラック_ベロシティー画面
⑨生ドラムトラック_フラム奏法画面
⑩生ドラムトラック_フラム奏法のグリッド画面
⑪ディビジョンの解説画面
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