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マッシュミュージックスクール ピアノ科講師の相原一智です。

今日はちょっとブレイクという感じで、ある楽譜をネタにお話したいと思います。

クラシックって楽譜に書いてある音を変えて弾いてはいけない」っていう先入観が大きいんですが、実はショパンはこんなクリエイティブなことをしていたんだ!という事実です。


 

 

①ショパン書き込みのバッハ楽譜、の注目点

数年前友達から見せてもらった、ショパン自身が書き込んだ楽譜です。

バッハの平均律第
1巻嬰ハ短調プレリュード、の一部です。ショパンもバッハも有名な作曲家ですが、バッハがこの曲を作った時よりも、ショパンは100年ほど後の時代で育ちました。

ショパンの自筆譜を売っているサイトより

この楽譜は現在は絶版のようです。


「平均律」は、ピアノを弾く人に取って避けて通れない優れた曲集(平均律クラヴィーア曲集)ですが、「どう弾くと良いんだろう?」と壁にぶつかりやすいです。

コツが見えれば楽しいのに、そのコツが中々見えない。

というのも楽譜には、とにかく表現面では何も書いてないんですね。

強弱の指示すら数えるほどしか無く、ペダルなんて無い時代だったから当然どこで踏めば良いかは自分で決めるしか無い。
まるで、書かれてある音を頼りに「後は全部自分で音楽を作ってね」と言われているようです(笑)

となるとハードルが高すぎますね。
まして当時とは違う楽器、ピアノで弾くとなると何か参考になるものはないかな・・・となるのですが、そんな中にこのショパンのアイディアの詰まった楽譜がありました
何せショパンも、今の私たちとある意味「同じ立場」からスタートしたわけですから。

改めて楽譜を見てみましょう。

ここから何を読み解けるか?

画像の三段全部に強弱はペンで書き込んでありますが、これは今は普通にレッスンの中で先生がすることです。

でも、1番下の段、これは驚きです。
ショパンはバッハの書いていない音を作曲してしまいました。

書き足した内声表現に注目してみましょう。
ここではソプラノ、バスに囲まれた
2パート分ですね。

ショパンは4声体コラール(ソプラノ、アルト、テノール、バス、の歌)をそこに聴き取っていて、バッハが二声三声しか書いてない小節に書き入れています。

ここを実際に弾いてみると、その滑らかなつながりに、「なるほど!こうしたのか」と驚きました。
これをそのまま取り入れるかはまさに「ケースバイケース」ですが、その選択肢を素晴らしく広げてくれているのが嬉しいんですね。
ショパンの「僕はこのように感じ取った」というアイディアを知っていることで、自分の基準ができるんです。
「私ならどうする?」と。

新たに自分で作ったっていいのです。
それは新感覚でしょう。
だって、ショパンと「バッハを再創造出来る」意味で、同じ目線に立てるのですから!

ショパン自身は、この楽譜通り弾くこともあったでしょう。でも、そう弾かないこともかなりあったでしょう。
本番の中だと、一部だけ音が増えると弾きづらいものです。
より弾きやすい形に直したかもしれません。



これを見て、思い出すのがショパンの有名なノクターン第2番作品9-2です。

この曲を使って彼が色んな人にレッスンをする度に、毎回違った装飾アイディアをたくさん書き残しました。
ウィキペディアでも見られますし、そのアイディアを一つにまとめた楽譜があります(ナショナル・エディション、エキエル版)。
これを全て一回に弾くとかえってバランスがおかしくなります。
当時は、いくつかを組み合わせてパターンを組んだりもしたようですね。

 

 

 

 

 

 

②より専門的に突っ込んでみると

これは、現代の我々にとってとても大切な問題を投げ掛けてくれます。
クラシックは楽譜通り弾くもの、という固定観念を根本から揺り動かすものです。

なぜって、書かれている楽譜を書かれた通りに正確に弾くだけでは、特にバッハはつまらなくなりやすいから。
実際、今回の楽譜では、ショパンは自分のノクターンの時のように表現にかなり踏み込んで書き加えています。

ただ、この内容を、コンクールや試験でやる時は、ある程度以上音を変えると問題になることが多いので、まあほどほどに・・・。

装飾音やカデンツァを含めて、当時から即興的に弾き手が踏み込む内容・ノウハウについては、バッハの息子エマヌエル・バッハが「正しいクラヴィーア奏法」の中で詳細に書き記しています。


これは(ショパンよりは
40年先輩の)ベートーヴェン、も様々な形で応用しており、決して古楽だけの世界ではないんですよ。
















いかがでしたでしょうか?
下記に本日のまとめ実践ガイドも書き記してあります。
ぜひご自身の音楽生活に役立ててください!

まとめ

①ショパンは「僕はこのように感じ取った」というように、バッハの書いていない音をアイディアとして書き足した。

②クラシックの世界でも書かれている楽譜から、さらに音を変える形で弾き手がクリエイトすることは、常識だった時代がある。
今も、ある程度は工夫して取り入れないと、損。
 


 

実践ガイド

①楽譜の音に追加したり音符を書き換える、と聞くと「そもそもこんなことをして良いんだ?」と思う気持ちもあるかもしれません。
確かに、即興的に音を入れるやり方にはコツがあります。
優れた例を聴きながらその良いコツを身に付けて行くのが楽しいのではないですか?時にはそれを失敗することもあるでしょう。
その時には何が良くなかったのかをちゃんと分かって次に生かせば良いんです。
大事なのは、固定観念を外して選択肢を広げることです!

②特に、バッハを当時の楽器ではない今のピアノで弾く時、演奏者が表現を適切に作れないと、すぐに音楽が固まったものになります。
それを聴いてバッハって難しいね、なんて聴き手に感じられたら嫌ですよね。

そのための手立てとして、上手に音を足す、ということは、音域の広がった今のピアノにおいては特に有効だと思います。

例えば、当時の楽器では出したくも出せないバスラインを補強して弾いているピアニストもいます。
また、ショパンのように即興的な表現を入れることで、「今のピアノでこそ生きるバッハ」をクリエイトすることが出来るのです。

もう一つ面白いのは、↑のように、どこか一つの場所の音表現を変えると、全曲のバランスを取る中で他の音にも変化を加える必要が出てくることが多いんですね。
その「曲を俯瞰する」ノウハウが身について分かってくること!

すごく高度な内容ではありますが、数多く優れた例に触れればどんどんセンスが磨かれてきます。
それこそがまさに、「音の振付師」とも呼べる、作曲家の目線に近くなってくるんです。
それがつかめてくると、無限通りの楽しみ方が開けますよ!

 

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